キャプテンみーこの空とぶ舟
第一章 龍神さまの紅い実 その四
前回までのお話
第一章その四
その日は朝から大嵐で、みーこは松の木のくぼみにうずくまっていました。波は山のように高く、みーこのいるところまで襲ってきます。
「ぺぺっしょっぱいのにゃ・・・」
みーこはずぶ濡れになってガタガタ震え始めました。
「寒いのにゃ・・・りゅーじんさま、助けてにゃ・・・」
みーこは天を仰ぎました。
おや、なんとなく上の方が明るいように思います。このくぼみはトンネルになって上まで続いているようです。
「うにゃ」
みーこは力を振り絞って、上へ登りました。トンネルは丁度、あの龍神さまの枝の付け根まで続いていました。そこはわずかにくぼみになっていて、不思議と乾いて温かでした。
「りゅーじんさま、かわいそうなみーこを助けてくれたにゃ」
みーこはそこに体を横たえると、濡れた毛を一生懸命舐めました。おなかがぐうっと鳴りました。
「りゅーちん・・・おにゃかすいたにゃ・・・」
✴︎ ✴︎ ✴︎
親さまが おわすぞ
日が満ちた
月が満ちた
ヒツキミチ
海が満ちた
道ができた
ミチツキヒ
ヒツキミチ
おわすぞ
✴︎ ✴︎ ✴︎
あたりは静まり返っていました。時折、思い出したように波の音が響くだけ。みーこは薄明かりの中で目を覚ましました。
「りゅーじんさま、おはようにゃー・・・」
みーこは、龍神さまの枝にひょいと飛び移りました。ぱっと横から、真っ赤な光がさしました。朝日が昇ります。辺りは、燃えるように、紅く・・・
と。
ぐわん。
と。
世界が揺らめいたようでした。
赤い靄がゆらりと立ち昇りました。
「はにゃー」
鱗が光ります。
たてがみがなびきます。
太い体をくねらせ、紅い目がみーこを見据えました。
そこに現れたのは、まぎれもなく、
「りゅーじんさま・・・」
(つづく)