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みーこ第一章その三 

第一章 その三

前回のお話

https://seaknow.xyz/serialstory/meecoo/950/

 

こうしてみーこは、東の端っこの島を目指して舟を漕ぎだしました。空にはぽっかりと満月が浮かんでいました。

エイコラヤートット

ウントコショードッコイ

エイコラヤートット

ウントコショードッコイ

ざぷざぷざぷ ざっぱーん

ちゃぷちゃぷちゃぷ ちゃぷぷん

ざぷざぷざぷ ざっぱーん

ちゃぷちゃぷちゃぷ ちゃぷぷん

東の島は どこにある

伝説の地はどこにある

龍神さまの ヒツキの地

伝説の紅い ヒツキの実

エイコラヤートット

ウントコショードッコイ

・・・

✴︎ ✴︎ ✴︎

何度お日さまが昇ったでしょう。何度お月さまが沈んだでしょう。みーこは、海と空の真ん中にぽっかりぷっかり漂っていました。

夜明け前でした。ぼんやり声が聞こえます。

「・・・こ、・・・ーこ・・・おい、みーこ!」

「はにゃ・・・」

みーこがうっすら目を開けると、靄の中に白い影が見えます。チビ竜でした。

「りゅーちん・・・」

「みーこ、そろそろだ、おやさまの島、日月見の地」

「はにゃ」

みーこがあくびをして、のびをして、ぱっちりと目を開くと、もうチビ竜はいませんでした。

靄が晴れ、海と空の端境から、朝日が顔を出しました。目を凝らすと、その中にぽつんと黒い点が見えました。みーこはお日さまに向かって舟を進めました。漕ぐほどに、点は次第にはっきりして、次第に大きくなり・・・

「ここが、ヒツキミの地、か、にゃ・・・?」

目の前に、切り立った崖の島が現われたのでした。

「りゅーじんさま、みーこにゃー、おじゃましますのにゃー」

みーこは岩場に舟をつけると、ひょいひょいと崖を登って行きました。島のてっぺんは、どこまでもずっと草はらが広がっていました。タンポポやシロツメクサが揺れています。

遠くに木が1本立っているのが見えました。近づいてみると、それは松の木でした。

「ヒツキじゃなくて、マツノキだにゃー」

みーこは島をぐるりと1周してみました。これといって何もありません。その夜、みーこは松の木の下に丸くなって眠りました。

✴︎ ✴︎ ✴︎

夢の中にチビ竜が現れました。

尻尾を揺らめかせ、何か言っています。

   日が満つとき

   月が満つとき

   海が満ち

   道ができるぞ

   日が満つのを

   月が満つのを

   海が満つのを

   道ができるのを

「まーまっとりゃーせ」

「りゅうちん・・」

✴︎ ✴︎ ✴︎

明くる朝、みーこはまぶしいお日さまに目が覚めました。

するとどうでしょう。みーこの目の前に、朝日を背にした龍神さまが現れたではありませんか。

「りゅーじんサマー!おじいさんが魚になってしまったのにゃー何とかしてにゃー!」

しかし龍神さまは答えません。

「お使いのりゅーちんがおしえてくれたのにゃー!実ィくださいなのにゃー!」

それでも龍神さまは黙ったままです。

「りゅーじんさま・・・?」

よく見るとそれは、松の木の枝でした。

「にゃんだ・・・松の木だったかにゃ」

みーこは顔を洗って爪を研いで、龍神さまを探して島のぐるりを回りました。

来る日も来る日も、みーこは龍神さまを探しました。けれども一向に出会えません。そうして旅に出て、もう三度めの満月を数える日でした。

(続く)