第一章 その三
前回のお話
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こうしてみーこは、東の端っこの島を目指して舟を漕ぎだしました。空にはぽっかりと満月が浮かんでいました。
エイコラヤートット
ウントコショードッコイ
エイコラヤートット
ウントコショードッコイ
ざぷざぷざぷ ざっぱーん
ちゃぷちゃぷちゃぷ ちゃぷぷん
ざぷざぷざぷ ざっぱーん
ちゃぷちゃぷちゃぷ ちゃぷぷん
東の島は どこにある
伝説の地はどこにある
龍神さまの ヒツキの地
伝説の紅い ヒツキの実
エイコラヤートット
ウントコショードッコイ
・・・
✴︎ ✴︎ ✴︎
何度お日さまが昇ったでしょう。何度お月さまが沈んだでしょう。みーこは、海と空の真ん中にぽっかりぷっかり漂っていました。
夜明け前でした。ぼんやり声が聞こえます。
「・・・こ、・・・ーこ・・・おい、みーこ!」
「はにゃ・・・」
みーこがうっすら目を開けると、靄の中に白い影が見えます。チビ竜でした。
「りゅーちん・・・」
「みーこ、そろそろだ、おやさまの島、日月見の地」
「はにゃ」
みーこがあくびをして、のびをして、ぱっちりと目を開くと、もうチビ竜はいませんでした。
靄が晴れ、海と空の端境から、朝日が顔を出しました。目を凝らすと、その中にぽつんと黒い点が見えました。みーこはお日さまに向かって舟を進めました。漕ぐほどに、点は次第にはっきりして、次第に大きくなり・・・
「ここが、ヒツキミの地、か、にゃ・・・?」
目の前に、切り立った崖の島が現われたのでした。
「りゅーじんさま、みーこにゃー、おじゃましますのにゃー」
みーこは岩場に舟をつけると、ひょいひょいと崖を登って行きました。島のてっぺんは、どこまでもずっと草はらが広がっていました。タンポポやシロツメクサが揺れています。
遠くに木が1本立っているのが見えました。近づいてみると、それは松の木でした。
「ヒツキじゃなくて、マツノキだにゃー」
みーこは島をぐるりと1周してみました。これといって何もありません。その夜、みーこは松の木の下に丸くなって眠りました。
✴︎ ✴︎ ✴︎
夢の中にチビ竜が現れました。
尻尾を揺らめかせ、何か言っています。
日が満つとき
月が満つとき
海が満ち
道ができるぞ
日が満つのを
月が満つのを
海が満つのを
道ができるのを
「まーまっとりゃーせ」
「りゅうちん・・」
✴︎ ✴︎ ✴︎
明くる朝、みーこはまぶしいお日さまに目が覚めました。
するとどうでしょう。みーこの目の前に、朝日を背にした龍神さまが現れたではありませんか。
「りゅーじんサマー!おじいさんが魚になってしまったのにゃー何とかしてにゃー!」
しかし龍神さまは答えません。
「お使いのりゅーちんがおしえてくれたのにゃー!実ィくださいなのにゃー!」
それでも龍神さまは黙ったままです。
「りゅーじんさま・・・?」
よく見るとそれは、松の木の枝でした。
「にゃんだ・・・松の木だったかにゃ」
みーこは顔を洗って爪を研いで、龍神さまを探して島のぐるりを回りました。
来る日も来る日も、みーこは龍神さまを探しました。けれども一向に出会えません。そうして旅に出て、もう三度めの満月を数える日でした。
(続く)