キャプテンみーこの空とぶ舟
第一章龍神さまの紅い実 その六(完)
「りゅーじんさま、ありがとにゃ」
みーこはつぶやきました。
そして駆け出します。つないであった舟にぴょんと飛び乗り、エイニャーと岩を蹴って、ざぷんざぷんと漕ぎ出します。おじいさんとおばあさんの待つ島へ帰るのです。
空と海の端境から、西へ西へ。来た道を逆にたどりました。
ぽつぽつと、小さな島々が見えてきました。あたたかな波が寄せ、浅い海がみーこの舟を迎え・・・
「おばあさん、ただいまにゃ!」
みーこはおばあさんを見つけると、一目散に駆け寄りました。
みーこは、おじいさんの桶に紅い実をぽちゃんと落としました。明るい水の中で、ヒツキの実は昇り立ての朝日のように煌きました。
おじいさん魚はそれをかぷりと丸呑みしました。そして、くぷっとひとつ、大きな泡を出しました。泡がくるくる回ってパチンと弾けると・・・
「やあ、すまんかったのう・・・」
桶には、びしょ濡れになったおじいさんが座っていたのでした。おばあさんはおいおいと、みーこはにゃーにゃーとなきました。
「ほんなら、お使いに行くでよ」
みーこの頭の上で声がしました。
「りゅーちん!」
そこには夢で会うのと同じ姿でチビ竜が乗っていました。
「いってらっしゃいにゃー」
ところがチビ竜は言うのです。
「みーこも一緒に行くでよ」
「にゃにっ?」
驚いて目を丸くするみーこに、
「おみゃ〜、ヒツキの実、食ったがや?」
「はにゃー、みーこ腹ペコだったのにゃー」
「だで、いかなかんが」
「にゃにっ!?」
おじいさんが心配そうに聞きました。
「どこに行くんじゃ?」
「わからんのだわ」
おばあさんが不安そうに聞きました。
「お使いって何なんかねぇ?」
「わからんのだわ」
そして、
「親さまの言うことは、いっつもなぞなぞみたいなもんだで」
チビ竜は歌うように言いました。
還せよ 戻せよ
始まりの姿に
ありのままの形に
みーこはたずねました。
「どういうことにゃ?」
「おみゃーさん、まだ六つも実ィ持っとるが。世界には、元に戻さなかんもんがたくさんあるでよ」
そして、みーこの頭をべちん!とはたくと、声高らかに宣言したのです。
「西へ行く。世界を巡って、元に戻すんだわ。・・・みーこが」
「はにゃーーーー!!!」
* * *
エイコラヤートット
ウントコショードッコイ
エイコラヤートット
ウントコショードッコイ
ざぷ ざぷ ざぷ ざっぱん
ちゃぷ ちゃぷ ちゃぷ ちゃぷぷん
ざぷ ざぷ ざぷ ざっぱん
ちゃぷ ちゃぷ ちゃぷ ちゃぷぷん
西の島は どこにある
終わりの島は どこにある
そこには一体 誰がいる
みーことりゅうちん どこへ行く?
温かな浅い海が広がっていました。遠くまで小さな島が連なって、その先は空へと続いているのです。
こねこのみーこは、小さな舟を漕いでいました。目指すのはお日さまの沈む、西のはしっこの島です。
「そこに何があるのかにゃー」
みーこが言うとチビ竜は、
「わからんのだわ」
と答えました。
そして2匹は唄うようにエイコラヤーと舟を漕いで行きました。
(おしまい、にわに続く)