あの頃、一緒に大好きなものを見つめていたともだち。それから倍の人生を超えて、一度も会うこともなく大人になっていたある日。大切な節目に思い出してもらえたこと、それはずっと心のどこかに存在してたこと。こんなにうれしいことはない。
おふたりの姿を青とピンクの猫で描いて欲しい、というご依頼だった。わたしの描く青い猫は、ソラ。お写真を見せてもらって、ソラの大人になった姿を借りて、描いたようにおもう。
先日、「2匹の名前つけてね」と連絡したら「ソラとクロエ」と返事をもらった。蓋を開けてみて驚いて、笑ってしまった。
彼女はわたしの描く青い猫の名前を知らなかったし、けれども彼を「ソラ」と名付けたのだ。彼はつまり、名前を呼ぶ前から「ソラ」だった。わたしは紛れもなくソラを描いたし、もしかしたらわたしが自分で描いてるつもりなだけで…ソラに描かされていたのかもしれない。
みんなの感じるあの感覚。わたしはそれを無意識に青い猫として描き、ソラと名前をつけた。そして彼女は、知らずにソラと呼んだ。
この世界の、なんとおもしろいことか。偶然の喜びを与えてくれる。予め決まっていた運命とも思えるような。わたしたちはまるで、後ろ向きに時間の中を進んでいくようだ。未来を後、過去を先、と呼ぶのが正に証拠だ。それぞれの分岐点で、道を選ぶ。彼女と出会ったあの頃、恐らく決めたのだ、いつか会おうって。
ありがとう。あの頃の彼女へ。そしてわたしへ。そして、今も。
「ボードは今でもリビングに飾っています。お願いして本当に良かったです。」