「好きな食べ物はなに？」
と聞かれたら、
しばらく迷ってから
「お米」
と答えるだろう。
食べることが好きだ。食べることは素晴らしいと思う。地球に生まれて五感をフルに使って感じる数少ない究極楽しみのひとつだ。だからほとんど多くの人が、食べることが好きだとおもう。
(好きでない人はきっと、何かの原因で感覚がねじ曲げられたか、思い出すきっかけに乏しかったか、もしくはもう物質のエンターテイメントを必要としていないか、だ)
そして日本という素晴らしい国に生まれて、この時期やはり新米である。今回のお米は昨年知り合った自然栽培の農家さんからいただいたもの。
お米も土鍋も、岐阜の方。
たまたま、というか、でもこれはご縁である。必要と思って探したら、絶対に手の届くところ、足を延ばせるところにあるしいるのだ。ど直球じゃなくても、なんらかのきっかけやつながりになるところがある。ちゃんと用意されてる。世界はやさしい。
実は我が家には炊飯器がない。亡くなった祖母がかつて言ってた「ご飯はお鍋で炊いた方が早いのよ」。なるほど確かにその通りなのだ。15分もあれば炊けるし、何より美味しい。学生時代の炊飯器が壊れてからこっち、お鍋で炊いてる。ホーロー、ステンレス、フライパン、圧力鍋、、、このピンクの土鍋に一目惚れしてからは、このこがごはん専用になった。
炊き方は簡単だ。
大事なのはお水のファーストインパクトなんだって(笑)。日本酒の仕込みをされてる方が言ってた。乾いたお米が一気にお水を吸い込むからだ。だからここに美味しいお水を使う。あとは水道水でいい。
洗うのはやさしく。1回目のお水を捨てたら、水を替えて決して研がない。あと何となくおまじないだけど、左に50回、右に50回かき混ぜる。左回りは開放、右回りは注入だって。ついでに一二三祝詞をぶつぶつ唱える。
お米と同量のお水。15分浸して、15分強めの中火、15分蒸らす。時間は数字ではなく感覚だ。1合ならどれも5分で良いかもしれない。焦げることもある。固いことも柔らかいこともある。生、っていうことはない。いつも美味しい。失敗はよっぽどない。やってみたらいい。
レシピが苦手なのはそれ通りを要求されるからだ。お手本を提示されるから、こうじゃなかったら失敗だ、って思わされる。どうも、失敗ができにくい世の中だ。しかもそれは、誰かの価値観だ。わたしは失敗と思ってないのに、焦げたら、水が多かったら失敗認定される。今回はこんなもんだ、でいいのに。
まあ、そんなことは土鍋を開けた瞬間、全部吹き飛ぶ。湯気が最高の演出をしてくれやがる。
美味しいごはんには、いやむしろ、何も要らない。ごはんをごはんで食べる。サイコーじゃないか。
他にも好きなものはいっぱいある。欲張りだから迷って迷ってそれでも、「好きな食べ物は米だ」と言うのだ。
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